ヤウ.モウの世界

<その2. ナゾのベンツ炎上事件>

こんなことが実際「ヤウ」なんですね。

話は2、3年前にさかのぼりまして、穏やかな秋の、鈴虫の泣く月夜の晩でした。私達夫婦はバーで一杯引っかけて、帰路にたどり着こうとする途中でそれは起こったのでした。

夫の運転するBMWが、レパルスベイ方面に向かってウオン.ナイ.チョン.ロードの坂を下りきった時、後ろから来たベンツのSLKが我々の車を追い越そうとしたので、追い越させてあげようと、スピードを緩めた、その時です。我々を追い越したはずのベンツが、反対斜線に飛び出したかと思うと、我々の車の前を、2メートルぐらい前を、スーッと滑るように横に流れて行き、左のフェンスに激突、タ−ンオーバーするやいなや、ボッと火がつきまして、あっという間に小さな爆発音とともに炎上、何もかもが一瞬の出来事でありました。

その間、我々の車はそこから10メートルぐらい先に進んでおり、近くのテニスコート手前に止めると、「ナンダ、ナンダ、一体ナニが起こったんダ!」とパニック状態で、心臓がバクバクいっておりました。

夫はすぐにダイヤル999をまわし、反対車線のタクシーの運ちゃんも、「わっ、なんだ、どーした!」と無線でおまわりさんを呼んだり、大パニック、大騒ぎかと思いきや、その時その現場にはなぜか、我々2人とタクシーの運ちゃんしかいなかったのです。寂しいものでした。

それから、パラパラと、人が集まってきて、野次馬Aが車のなかを覗こうとした途端、第2の爆発が起こり、黒煙が闇夜に燃え上がりました。絶望的観測から見ると、もうドライバーは生きていないだろうと思われました。野次馬Aも命からがら逃げてきて、「危なかったぜい。おれってもうヒ−ロー?」みたいなことを言って、寄ってきたみんなに興奮さめやらで情況を説明しているのでした。

私はやはり恐かったので、車の外には出たものの現場には近寄れず、遠巻きにして見ていたのですが、喧嘩、事件を見るのが大好きな夫は、巻き込まれるのは嫌だけれどどうなっているのか、見たい、聞きたい、知らずにはいられない人なので、私が心臓をバクバク言わせている時、すでに車から飛び出して現場に向かって走っていました。「危ないからやめなさい!」と言う私の声も空しく闇夜にかき消されて、、、。

ここからは全て夫が見聞きしたことです。

やがて、パトカーや白バイのおまわりさんが到着しまして、下火にはなっているもののまだ火が残っているので、消火作業にはいりました。そして、なかを覗いてみると、なんと、(誰が覗いたのか、おまわりさんか?野次馬A が?はたまた夫か?)中は空っぽだったのです!

その車に何人のっていたのか知りませんけど、少なくともドライバー一人は乗っていたはずです。それなのに中には誰もいなかっただなんて、、!

爆発前にドライバーが、亀のようにひっくり返っている車から、スタントマンよろしくスルリとはい出してどこか行ってしまったのでしょうか?しかしもしそうであれば、夫や野次馬Aたちが目撃しているはずです。夫は車から「誰もで出こなかった」と言っています。それでは崖側に投げ出されて、崖側に落ちてしまったのでしょうか?おまわりさんがサーチライトで照らして調べたけれど、それらしきものはなかったそうです。

そして、なぞはナゾを呼び、さらにナゾの事件へと転回してゆくのであります。

おまわりさんは中に誰も乗っていなかったので、炎上したベンツの身元を調べる為持ち主の家へ電話しました。そしたらなんと、持ち主は家に帰っていたのです。その現場から、車で最低1時間はかかると言う、西貢というところにある自宅で、持ち主はソファにもたれながら、パイプをくゆらせていました。事故が起きてから、30分ぐらいしか経っていないのになぜそんなことが出来たのか?

我々夫婦は家に着いてからも、ずっと謎解きや推理に夢中で、我々は第一目撃者であり、現場を離れてはいけない、(それよりも、事故を引き起こした当人かもしれない)という自分達の立場をすっかり忘れていたのでありました。

そして、真夜中の2時になっても推理は続き、車を運転していた人と、車の持ち主は同一人物ではない、という結論に達したのでした。夫の証言は、ベンツを運転していた人は、酒によっていたか無免許のどちらかで、マトモな人の運転ではなかった、と言うことです。よって、

  1.盗まれた車で、運転していた人はバレるのを恐れて、崖を転がるようにして逃げてしまった。

  2.持ち主の息子か誰かに車を貸して、酒酔い運転がバレるのを恐れてやはり、崖を降りて逃げていった。

  3.持ち主の息子が父親に内緒で無免許運転をし、怒られるのが恐くて崖側から逃げた。

という推理が成り立つわけですが、問題は崖側からどうやって逃げられたのかであります。怪我はしていたのか?無傷で車から脱出できたのか?脱出した時車は炎上していたのか?(あんたは引田天コウかい?)

そして、恐さは後から襲ってきました。もしあのベンツが、我々の車を直撃していたら、今頃死んでいたかもね。ベンツに横から、激突されて、それこそフェンスを飛び越えて崖の下に落ちちゃったりしたら、、。

ついにこの事件はナゾの解けないまま朝を迎えてしまいました。

そして、嬉しや朝刊。 (不謹慎ながらも、自分が直接この目で見た事件が載っているかと思うとちょっとワクワクしてしまうのです。)第一面を見ると、、載っていませんでした。 「そうか、そうか、それなら、2面だな!」にも載っていません。 「それじゃ、3面かい?」 「老人80歳、孤独の焼身自殺」なんて痛々しい記事になっている。(こっちの新聞は平気で、死体写真などを載せてしまうのです。)黒焦げ死体は載っているものの、黒焦げベンツは載っていない。

ウ−ム。これは一体どうしたことだろう?昨日のそれは事件ではなかったのだろうか?

たぶんこの事件は、誰かの手のよって、「揉み消された」に違いない、とわたしはにらんでいます。金持ちの息子がやった不祥事を父親が警察に金を握らせて帳消しにしてもらった、ま、だいたいそんなところじゃないかと思います。

迷宮入りラビリンズ事件でした。


閑話休題

これを書いていたら夫が帰ってきて、「ばかなやつだよ。」と言うのでその話を一つ。笑えます。

敢えてタトルをつければ、「パワーウインドウに手を挟まれた男」デス。

今日の昼間、夫がノースポイントからコーズウエイベイに向かって一般道路を走っていたら、とてもデンジャラスな割込みをされたので、危ないじゃあないかと、ホ−ンを鳴らして、パッシングした、そしたら割り込みをした男が怒って、車から降りてきて夫に殴りかかろうとしたので、相手の腕が伸びてきたところを、夫はパワーウインドウのボタンをウイ−ン、、、。

そして、ダイヤル999。男の手は、もうちょっとのところで、ドアロックを掴もうとするけど、惜しいことに1インチ程届かない。そのまま、間抜け面でわめいていたが、やがて力尽きてぐったり。そして、白バイおまわりさんの登場。お決まり文句、「どうした?」に夫は答える。「この手が、突然侵入して来たのでス。これはものを盗む為に入ってきた手か、はたまたオレを殴ろうとしている手なのか、是非突き止めてほしい。」野次馬がおもしろがっている。腕を挟まれた男は、恥ずかしいのと痛いのとで早く取ってくれと哀願するが、夫とおまわりさんは、動かぬ決定的証拠をそう簡単に外すわけにはいかないのであった。

そして、ついに男は「悪かった。オレが悪かった。謝ります。ごめん!」と謝ったのだそうだ。

「ちょっとかわいそうだったけどね。」と夫は言う。(なら、早く取ってやれよ−。)

パワーウインドウにすっかり助けられて、命拾いした夫は、ひたすら、「このパワーウインドウはスゴイ、スゴイ。」と褒めておりました。

妻からも一言、「パワーウインドウさん、どうもありがとう!」


ホームに戻る:
更新のページに戻る:
ヤウモウの世界その3に進む: